「冬から春先にかけて、子どもの間で流行する感染症」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?その一つに「ロタウイルス感染症」があります。
「名前は聞いたことあるけど、詳しくは知らない…」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、ロタウイルスとはどんなウイルスなのか、感染するとどうなるのか、そして私たちが注意すべき点について、分かりやすく解説します。特に小さなお子さんをお持ちの方は、ぜひ参考にしてくださいね。
ロタウイルスとは?
ロタウイルスは、乳幼児を中心に急性の胃腸炎を引き起こすウイルスです。非常に感染力が強く、衛生環境が整っている先進国でも、5歳までにほとんどの子どもが一度は感染すると言われています。
- 感染経路は? 主な感染経路は、ウイルスが含まれた便や吐しゃ物が口から入る「経口感染」です。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- ウイルスが付着した手で食事をする
- ウイルスが付着したおもちゃなどを舐める
- 感染した人のおむつ交換後に、十分に手洗いをしないまま他のものに触れる
- 乾燥したウイルスが空気中に舞い上がり、それを吸い込む(飛沫感染の可能性も指摘されています)
- 主な症状は? 感染してから発症するまでの潜伏期間は、通常1~3日です。主な症状としては、以下のようなものがあります。
- 突然の嘔吐
- 水のような下痢(米のとぎ汁のような白い便が出ることもあります)
- 発熱
- 腹痛
- 流行時期は? 一般的に、冬から春先(1月~5月頃)にかけて流行することが多いです。
ロタウイルス感染症で注意すべきこと
ロタウイルス感染症は、適切な対応をすれば数日で回復することが多いですが、いくつか注意すべき点があります。
- 脱水症状に注意! 最も注意すべきなのは脱水症状です。嘔吐や下痢で体内の水分や電解質が失われるため、こまめな水分補給が非常に重要です。
- 水分補給のポイント: 経口補水液や湯冷まし、麦茶などを少量ずつ、頻繁に与えましょう。一度にたくさん飲ませると吐いてしまうことがあるので、スプーン1杯から始めるなど、様子を見ながら量を調整してください。
- 脱水症状のサイン: 口の中や唇が渇いている、おしっこの回数や量が減る、元気がなくぐったりしている、泣いても涙が出ない、皮膚の弾力がなくなるなどの症状が見られたら、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 重症化のリスク まれに、けいれんや脳症、腎不全などの合併症を引き起こすことがあります。特に初めて感染する場合や、月齢の低い赤ちゃんは重症化しやすい傾向があるため、注意深く様子を見守ることが大切です。
- 感染力の強さ 前述の通り、ロタウイルスは非常に感染力が強いウイルスです。家族内や保育施設などで集団発生することも珍しくありません。
ロタウイルスから身を守るためにできること
ロタウイルスから身を守るためには、予防と感染拡大防止が重要です。
- 予防接種(ワクチン) ロタウイルスワクチンは、重症化を防ぐ効果が期待できます。日本では、乳児期に任意接種(2020年10月からは定期接種)として受けることができます。接種時期や種類については、かかりつけ医に相談しましょう。
- 手洗いの徹底 最も基本的な予防策は、石鹸と流水による手洗いです。特に、トイレの後、調理や食事の前、おむつ交換の後などは念入りに洗いましょう。アルコール消毒だけでは効果が不十分な場合があるため、手洗いが重要です。
- 適切な消毒 便や吐しゃ物が付着した場所や物は、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を薄めたもの)で消毒するのが効果的です。
- 消毒液の作り方(例): 500mlのペットボトルに水を入れ、ペットボトルのキャップ1杯(約5ml)の塩素系漂白剤を混ぜる。
- 注意点: 金属を腐食させたり、色柄物を脱色させたりすることがあるので、使用方法を確認してください。また、換気を十分に行い、直接皮膚に触れないようにゴム手袋などを着用しましょう。
- 感染者との接触を避ける 流行時期は、人混みを避けるなどの対策も有効です。
- もし家族が感染したら…
- おむつ交換や汚物の処理は、使い捨ての手袋とマスクを着用し、処理後はしっかりと手洗い・消毒をしましょう。
- 汚れた衣類は、他の洗濯物とは分けて洗い、可能であれば次亜塩素酸ナトリウムで消毒してから洗濯するとより安心です。
- タオルや食器の共用は避けましょう。
- 患者さんは、できるだけ他の家族と部屋を分けるなどの配慮も有効です。
感染してしまった場合の対処法
もしロタウイルスに感染してしまったら、慌てずに以下の点に注意して対処しましょう。
- 安静にする: 十分な睡眠と休息をとり、体力の消耗を防ぎましょう。
- 水分補給: 脱水症状を防ぐために、こまめに水分を補給します。
- 食事: 吐き気や下痢が落ち着いてきたら、おかゆやうどんなど、消化の良いものから少しずつ始めましょう。
- 医療機関の受診:
- 水分が全く摂れない
- 嘔吐や下痢が頻回でぐったりしている
- 高い熱が続く
- 血便が出る
- 脱水症状のサインが見られる 上記のような場合は、すぐに医療機関を受診してください。
まとめ
ロタウイルスは、特に乳幼児にとって注意が必要な感染症ですが、正しい知識を持って適切に対応すれば、過度に恐れる必要はありません。予防接種や日頃からの感染対策を心がけ、もし感染してしまった場合でも、落ち着いて対処しましょう。